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ブログ 2017年10月31日
今回は歯の歯髄細胞を利用し、再生医療に役立てる取り組みをしている研究、活動をご紹介します。
僕が不勉強で最近まで知らなかったのですが、ある企業の研修会の企画で、九州大学の同級生の 山座 孝義 先生が歯の歯髄細胞を再生医療に役立てる研究をしていることを知りました。先日行われた説明会に参加し、その詳細を聞いて来たのでご紹介します。
先に概要を記述しますが、抜歯してそのまま廃棄している乳歯や親知らずの中にある歯髄細胞には、iPS細胞に匹敵するような幹細胞が存在しており、その細胞は抽出、培養、保存が容易で、口の中だけでなく様々な疾患に対する治療に応用する研究がされているとのことでした。
実際、山座先生の研究では、ヒトの歯髄細胞から作ったミニ肝臓を移植することによって、肝硬変になったラットの肝臓が健康な臓器に変化したことが確認されており、この研究の先には、先天性代謝疾患で肝機能が低下している方に、ミニ肝臓を移植する臨床応用も検討されているそうです。山座先生以外にもこの歯髄細胞の中にある幹細胞を応用した研究は数多く行われており、今後、神経疾患や肝臓疾患、心臓疾患、自己免疫疾患、歯科疾患等様々な分野での再生医療に応用できる可能性があるそうです。
またこれをビジネスにしているセルテクノロジーという会社の資料では、すでにヒトへの臨床応用が行われているとのことです。交通事故による脊髄損傷のため首から下が麻痺してしまった患者さんに対して移植を行い改善が認められたケースや顎骨が欠損してしまった方に移植したところ骨再生が起きインプラント治療を行ったケースなど4例報告されており、他にも結果待ちのものもあるようです。現在、再生医療が可能な細胞を備蓄するため、抜歯した歯を本人の同意のもとにボランティアとして「献歯」する「DPストック」、またご自身に再生医療が必要になった時に備えて抜歯した歯から歯髄細胞を抽出、一定量まで培養し、長期間冷凍保存しておく「歯髄細胞バンク」という活動(こちらは有料)を行っているということでした。
当院は、抜歯して通常廃棄していた歯が今後の再生医療の発展につながるということで、すでに認定協力施設として登録を行っています。とくに、乳歯や20歳以下の親知らずには再生能の高い幹細胞が多く存在しているため、その利用趣旨にご同意頂ける場合、「DPストック」にご協力いただけたらと思います。「献血」と同じくらいほぼ全ての方に利用できるようにするためには、様々な遺伝子タイプのものが必要になります。1本の歯から約1000人分の薬を作ることができるため、「DPストック」された細胞は、今後の再生医療の研究や他の重篤な患者さんへの応用に役立てられ、もちろん本人が必要になった場合でも100%遺伝子の型があった細胞で再生医療を受けることができます。
また、20歳以上の方でご自身の細胞を将来のために使えるよう備えたい場合は、「歯髄細胞バンク」をご利用ください。年齢が高くなると再性能をもつ細胞が少なくなるため他人への応用は難しいのですが、「歯髄細胞バンク」はご自身の細胞をご自身のために利用するため培養、保管するものです。それでもご高齢の方では難しいのですが、これまでは65歳の方で細胞培養に成功し保管しているとのことでした。
ご興味がある方は、一度セルテクノロジー社のHP(www.acte-group.com)をご覧ください。